旧長沼町(現須賀川市長沼地区)の「太田屋菓子店」さんをご紹介します。
ごまかしのない、真面目なお菓子作りを続けて約55年。目の届く範囲に商品を置くというモットーから、他所では販売していませんが、しっかりと顧客が付いていて、午前中に売り切れてしまうお菓子もあります。
今回は趣向を変えて、インタビュー形式でお伝えします。お話を伺ったのは、3代目候補の繁克(しげかつ)さんです。
-太田屋さんは包装が綺麗ですね
「包装も私がしています。1から10まで自分でやらないと気が済まない性分なのです。効率を考えると、お菓子は自分で作って、包装はパートさんに任せるというのが理想なのですが、私は包装が一番大事だと思っています」
-と、おっしゃいますと?
「商品の包装というものは、お店の顔なのです。それを雑にしてしまうと、いかに中身が美味しかったとしても、お客様が商品を手に取るまで至らないということが起きるんです」
-なるほど…。最近、そこまでこだわっているお店は、あまりないような気がしますね
「パートさんを使うのが悪いという訳ではありませんが…。正直申しますと、私も修行時代は、なかなかお客様の立場になって考えることが出来ませんでした。修行先から戻って来て、自分で『店の人間』としてお菓子作りを始めてみて、初めて…」
-実感を伴う…
「そうですね。誰でも出来る包装というものが、実は中身と同じくらいに大切ですね。中身以上に神経を使った方が良い部分だと思います。まあ、改めて言う程のことでもないのかもしれませんが」
-いえいえ、勉強になります
「雑というか、なあなあにやってしまっては、駄目ですね。包装は、店としてきちんとお菓子作りをしているということを、お客様にアピールする格好の場でもあるんです」
-その心意気は、私にも伝わりました。やっぱり丁寧に包装してあると、食べる側としても気持ちが良いですし、じっくり味わおうと思いますから。
「法律上は、そうですね。ただ、表示しなくてはいけない風潮になってきていますね。私もインチキやごまかしが嫌いなので、そういう所もきちんとやっていこうと。また、きちんとしていれば、それを言葉にしてアピールしなくても、私達の姿勢はお客様に伝わるんですよね」
-なるほど。そうして真面目にお菓子を作っていく事で、顧客が付くということですね
「はい。例えばシュークリームを100円で出しているんですが、最近リピーターの方が増えてきました。中には『安いから!』と言って買って行かれるお客様もいらっしゃったんですが、その方がある時、『これ100円の味じゃないよね』とおっしゃったんです。それで、ああ、なるほどな…と」
-わかってくれたんだな、と
「そうなんです。値段設定を安くする分、中身を妥協して作るということはありませんので」
-嘘をつかずにやってきたことで、わかってもらえたということですね
「ええ、驚きの出来事でした。真っ当な仕事をしていれば、お客様は付いて下さるのだと思います」
-なるほど。やはり、和菓子の命であるあんこも自家製なんですか?
「ええ、あんこは全て2代目(※筆者注:繁克さんのお父さん)が作っています。ちなみに、小豆は初代の頃からずっと矢吹町の特定の農家さんから仕入れています。農薬を殆ど使わずに育てているものです」
-流石ですね。だから原材料表示も自信を持って出来るわけですね。
「はい。『これ、誰が作ったの?』という様な原料は使わない方針です。そういう意味では、うちはどなたに工場見学をして頂いても構いません。カタカナが並んだ怪しげな薬品も使っていませんので」
と、太田屋さんのお菓子作りに対する真面目な姿勢が伝わったでしょうか。
勿論、真面目なだけではなく、お味もよろしいのです。郡山は元より、会津や石川郡から足を運ぶお客さんもいるのですから。
私が特におすすめするお菓子は最中です。2代目入魂のあんこが、口福をもたらします(ちなみに、あんこを自作する和菓子屋さんは全体の1割程度)。また、これからの季節は花見団子もおすすめ。みたらしもあんこも絶品で、「花より団子」になること請け合いです。是非お試しあれ!
◆太田屋菓子店
須賀川市木之崎字蓑輪6-102(地図)
9持~19時営業 不定休
0248-68-2619
(お宝リポーター 本多)